星の降る線路の上で
誰もいない駅の改札口を出ると、左手に一台の自動販売機があった。
あまり普段見かけない珍しいタイプで、真っ白なボディの中央には発光ダイオードのモニターがあり、数字のルーレット並んでいた。
モニターの上にあるディスプレイには色とりどりの缶が並んでおり、三崎の渇き切った喉を誘惑していた。
三崎は投入口に硬貨を落とし、ディスプレイから青い缶の清涼飲料水に品定めすると、ボタンを押そうとした…

その瞬間…

勢い良く伸びてきた小さな指が、三崎の指より一瞬早くボタンを押していた。
缶が重力に任せて落下する鈍い音と共に、発光ダイオードのルーレットが回り出す電子音が鳴り始めた。
突然の出来事に何が起こったのかわからない三崎は、呆気にとられたように指の伸びてきた方を見る
犯人はそれを待っていたかのように、悪戯っぽい瞳でニッコリと笑って見せた。
小学生の高学年くらいだろうか…
少し茶色がかったショートカット、デニムのシャツにショートパンツ、背中には赤色のリュックサックを背負い、肩からは花の模様が入ったポシェットをぶらさげている。
短い髪のせいで一見男の子と間違えてしまいそうだが、整った顔立ち、愛らしい唇、長いまつげの下にある大きな透き通った瞳には、あと何年かすれば、かなりの数の男子生徒の心を虜にするだろう片鱗がうかがえた。
「あ、あの…」
自分でも間の抜けた声だと思ったが、この状況で何を言えばいいのだろう。
少女はぽかんと口を開けている三崎に、自信に満ちた笑みを浮かべると、人差し指で誘うようにディスプレイを指差して見せた。
それに釣り込まれるように三崎がディスプレイに目をやる。
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