星の降る線路の上で
「…で、どこに行くつもりなんだ?」
「行き先なんか決めてたら家出なんて出来ないわ…電車に乗って、窓の外を眺めながらゆっくりと考えるの…たんぽぽの子供達が風に乗って、新しい地に旅立つようにね…」
皮肉いっぱいの三崎の言葉など、まるで気にもかけていないように少女は瞳を輝かせた。その視線の向こうには、眩しいくらいに希望に満ちた未来が描かれているのだろうか…
「お好きに…風に乗る事が出来たらな」
三崎は余裕に満ちた表情を浮かべると、不敵に笑って見せた。
「どういう事…?」
少女が怪訝に問う。
僅かではあるが、自分に向けられた瞳に不安を宿しているのを見逃さなかった。
三崎はたたみ掛けるように芝居がかった声で尋問する。
「俺がどうしてここに一人でいると思う?」
「失恋したから」
微塵の迷いも無く少女が即答する。
これ以上に無い完璧な正解であった…三崎は自ら墓穴を掘った事に後悔すると天を仰いだ。
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