星の降る線路の上で
空は相変わらず雲ひとつ無く青かった。
セミ達の声は一向に衰える気配が無く、鼓膜を刺激し続ける。
新旧二人の電車の待ち人は言葉を一切交わす事も無く、完全に風景に溶け込み、その一部と化してしまっていた。
少女との気まずい沈黙を何とかしようと考えていた三崎だが、大人げない意地がそれを邪魔して自分から歩み寄る事が出来ない…
そんな重い沈黙の協定を最初に破ったのは少女の方だった。
「ねえ…」
独り言のようにそう切り出すと、三崎の返事を待つ事無く続けた。
「あたし達、いつまでこの駅の置物になってればいいの?」
それを一番知りたいのは三崎自身であったが…あえて言葉にはしなかった。
炎天下の太陽に身も心も消耗し、無意味な論争をする気力も湧かなかったのだ。
「このままじゃ干からびちゃうよ!この若さでミイラになるなんて、まっぴらごめんだわ」
少女の吐き捨てるような訴えに、三崎はカイロ博物館に眠る一体のミイラを思い出していた…
『最も偉大なファラオ』と呼ばれたラムセス二世…
長きに渡ってエジプトを統治し、生涯に五十人の妻を持ち、数々の伝説を残した王でさえも、死んでミイラになってしまえば、もうそれ以上何も考える必要なはい。
自分の国の未来も、失ってしまった最愛の存在の事も…
「ねえ!さっきからずっと黙ってるけど…聞いてるの?」
殺気立った少女の声が、三崎を三千年前の古代エジプト文明から呼び戻す。
どうやら思いつく限りの悪態をつき続けたらしい…三崎は意識を現実に戻すと、少女との回線を繋いだ。
「聞いてるよ…他に誰もいないんだから」
「じゃあ、何とかしなさいよ!」
「何とかって…どうすりゃいいんだ?魔法のステッキでも振りかざして電車を呼べばいいのか?」
「知らないわよそんな事!あなた大人なんでしょ?だったら自分で考えなさい」
「大人って……」
少女が突き付けた理不尽な要求に、三崎の中で何かが音を立てて崩れた。
セミ達の声は一向に衰える気配が無く、鼓膜を刺激し続ける。
新旧二人の電車の待ち人は言葉を一切交わす事も無く、完全に風景に溶け込み、その一部と化してしまっていた。
少女との気まずい沈黙を何とかしようと考えていた三崎だが、大人げない意地がそれを邪魔して自分から歩み寄る事が出来ない…
そんな重い沈黙の協定を最初に破ったのは少女の方だった。
「ねえ…」
独り言のようにそう切り出すと、三崎の返事を待つ事無く続けた。
「あたし達、いつまでこの駅の置物になってればいいの?」
それを一番知りたいのは三崎自身であったが…あえて言葉にはしなかった。
炎天下の太陽に身も心も消耗し、無意味な論争をする気力も湧かなかったのだ。
「このままじゃ干からびちゃうよ!この若さでミイラになるなんて、まっぴらごめんだわ」
少女の吐き捨てるような訴えに、三崎はカイロ博物館に眠る一体のミイラを思い出していた…
『最も偉大なファラオ』と呼ばれたラムセス二世…
長きに渡ってエジプトを統治し、生涯に五十人の妻を持ち、数々の伝説を残した王でさえも、死んでミイラになってしまえば、もうそれ以上何も考える必要なはい。
自分の国の未来も、失ってしまった最愛の存在の事も…
「ねえ!さっきからずっと黙ってるけど…聞いてるの?」
殺気立った少女の声が、三崎を三千年前の古代エジプト文明から呼び戻す。
どうやら思いつく限りの悪態をつき続けたらしい…三崎は意識を現実に戻すと、少女との回線を繋いだ。
「聞いてるよ…他に誰もいないんだから」
「じゃあ、何とかしなさいよ!」
「何とかって…どうすりゃいいんだ?魔法のステッキでも振りかざして電車を呼べばいいのか?」
「知らないわよそんな事!あなた大人なんでしょ?だったら自分で考えなさい」
「大人って……」
少女が突き付けた理不尽な要求に、三崎の中で何かが音を立てて崩れた。