戦国遊戯
***** 幸村's View *****

「若!妻女山はも抜けの殻です!」

上杉軍がいるはずの妻女山へ向かう別働隊一行は、佐助の言葉に動きを止めた。

「なんだと!?確かか!?」

佐助は黙って頷いた。

「謙信自身も、本陣らしき場所にはおりませんでした」

「…しまった!こちらの作戦を見抜かれていたか!」

ちっ、と、舌打ちをして、別働隊全員に告げた。

「本陣が危ない!急いで本陣へ戻るぞ!」

辺りの霧が晴れ、道もしっかりとわかるようになった。行きに比べると、戻る速さは格段に早い。それでも、4分の1以上行きでかかった道のりだ。時間がかかる。

「俺は一足先に、お館様の所へ戻る!」

足軽たちには悪いと思いつつ、馬を蹴り、急いで本陣へと向かった。ずっと歩き通しで疲れているはずの兵達も、駆け足で本陣へと急いだ。


お館様、無事でいてください!


ふと、玲子の顔が浮かんだ。


しまった、上杉の本隊が、すでに本陣に向かっていたとすれば。玲子が本隊と正面からぶつかってしまっている可能性がある!


また、ちっ、と、小さくしたうちをした。
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