戦国遊戯
近くにいた馬に乗り、あの人のいる場所へと急いだ。涙をぐいっとぬぐいながら、ひたすらに走った。

横たわっているあの人を発見した。
馬を止めて、そばに駆け寄った。

「ごめんね、ごめんね」

ずっと呟いていた。体を抱きしめながら、ごめんね、と。


しばらく、遺体を抱きしめた後、その遺体を馬に乗せた。


そのとき、ポケットで音がした。


――――――――携帯!?


慌ててポケットから携帯を取り出した。画面には、希美と出ていた。

「もしもし!?」

携帯に出ると、希美が発狂寸前のような声を出した。

『れいちゃん!?どこ、どこにいるの!?』

「あぁ…うそ、ほんとに希美?」

『今、どこにいるの!?れいちゃんと急に連絡がとれなくなって。心配したんだから…』

電話の向こうで泣きそうな声で聞いてくる希美。本当に、希美だ。

「あの、どう説明すればいいのかわかんないんだけど。とにかく、そっちに戻るために、教えてほしいことがあるんだけど」

『は!?ね、今どうなってるのよ!』

はぁ、とため息をついて答えた。

「今、戦国時代にいる」

『は!?』

「だから、戦国時代。今ちょうど、川中島の戦いが終わったとこ」

『ちょっ…ふざけないでよ!こっちがどれだけ心配してたと』
「ふざけてなんかないよ!私、今、戦国時代にいるの!」

深呼吸をして、続けた。

「教えてほしいの。川中島の戦いって、どんな戦いだった!?」

『ちょ、ちょっと待って…』

パチパチッと音がした。

『えぇっと…川中島の戦いでは、勝負はつかずに、お互い引いたことになってる。そうね。あー…一応、武田軍が、上杉軍を退けたから、辛勝ってとこかな』
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