戦国遊戯
「玲子様。どうかご自身を責めないでくんろ」

「んだ。おらたちは、玲子様のおかげで、今、生きていられるんだべ」

え?と聞き返した。

「玲子様が、あん時柿崎を殺さねかった。だから、敵さんも武器を下ろしただ。…確かに柿崎を連れて行った奴らが襲撃された。だども!もし玲子様が柿崎を殺していたら…きっと、もっと死人が出たと思うだ。おらたちだって…生きていたかどうか…」

「そんだ!おら、あの時はなんで殺さねーのか理解できなんだども。今は、あのときのあの判断は間違ってねーと思うだ」

こらえていた涙が、あふれ出てきて止まらない。

「でも、私…!」

兵達は首を横に振る。

「これ以上、ご自身を責めるのはやめてくんろ」

もう一度、まるで言い聞かせるかのように言う。

「おらたちのような農民は、ただ、一日も早く戦が終わって、平和に生きられるようになることだけが望みだ。戦に出るだども、本当は死にたくないだ。死なずに、おっかぁのところへ戻れることが、なによりの望みだ」

「そのためには、玲子様のお力が必要なんだ!おらたちと一緒に、死んでしまった奴らのためにも、一緒に頑張って欲しいだ!」

「うぅっ…うわぁぁぁー!」

兵達に泣きついた。

「ごめんなさい。ごめんなさい」

「れ、玲子様!?」

「泣かないでくんろ!」


静かな本陣。辺りには、玲子の泣き声だけが響いていた。
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