戦国遊戯
服を着たまま、風呂場へと案内された。服を着たまま、といっても、制服ではなかった。白い寝巻を着ていた。

私、いつ着替えたんだろ。

その寝巻きの上から、そのままお湯をかけられる。

「ふふ、お湯加減はいかが?」

「あの、ここはどこなんですか?」

聞くと、女性は何も言わず、ただ、にっこりと微笑んだ。

「髪もお湯で一度、洗い流した方がよさそうじゃ」

そう言って、頭からお湯をかけてきた。思わず、目をつむる。

「詳しい話は、朝餉を食べてからにするとしようか」

そう言って、何度かお湯をかけてくれたあと、また外へ出て、軽く体と頭をふいてくれて、部屋へと連れて行かれた。

信玄の家に、勝るとも劣らない、立派なお屋敷だった。連れられた部屋に入ると、朝餉とは思えないほどの、豪華な料理が並んでいた。

「さぁさ、遠慮せずにお食べ」

にっこり笑う女性の顔に、思わず照れて、顔が赤くなった。

「い、いただき、ます」

そう言って、お箸を手に取り、少しずつ、ご飯を食べた。思いのほか、おなかがすいていたのか、結構な量を食べた。

「ご馳走様です」

お箸を置いて、手を合わせ、軽く頭を下げて言った。女性は、満面の笑みで、頷いていた。
パンパンっと手を叩くと、部屋に何人か侍女が入ってきて、目の前にあったお膳を片付けていった。ありがとうございます、と、頭を下げると、侍女がびっくりしたような表情で、いえ、と、短く言って、その場を去っていった。

「さて。玲子。ここがどこか、という質問だったの」

女性に言われてびっくりする。自分から名乗った覚えはない。

「そう、ですけど…どうして私の名前を?」

不思議そうに聞き返すと、女性はまた笑った。

「信玄が、お主のことを、そう、呼んでおったからの。ここは、わらわの屋敷。上杉謙信の屋敷じゃ」

「…え?」

「おや、聞こえなかったかの?ここは、上杉謙信の、屋敷じゃ」

にっこりと笑って答えた女性の言葉に、ただただ、あんぐりと、口をあけていた。
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