戦国遊戯
「だだ…だって!あなた今、ここは私の屋敷だって言ったじゃない!」

頭がパニックになった。私の屋敷だといい、上杉謙信の屋敷だと言った。上杉謙信は男だと、信じて疑っていなかった。なのに、今、目の前にいるのは、明らかに女性だ。

「あぁ、そうじゃ。どうかしたか?」

「あ、あなたが上杉謙信!?」

頭の中が、ぐるぐると回った。言っている意味がわからない。

「だから、そうだ。と、言っておる。おかしな子じゃ」

ふふっと笑う謙信に、最大の疑問を投げつけてみた。

「だって、謙信って男じゃない!あなた、女でしょ!?」

言うと、謙信は、声を上げて笑った。

「あはは!おや、お主。そんなこと気にしておったのか?」

へ?とびっくりする。

「わらわは体は確かに女。だが、この地を治めるものとして、男として、世にはそう、思い込ませておる。どこからこの情報が漏れるとも限らん。どんな書物にも、一切、わらわが女だという記録は残させてはおらぬ。まぁ…一部の者は知っておるがの」

静かに笑っているその女性の目は、獲物を狙ったように鋭かった。目をそらせば、狩られる!そう、思った。

そして、はっと気づいた。

「な、なんで私が、ここにいるの!?」

確か、武田軍の陣営にいたはずだ。その後、幸村になだめられ、兵達に慰められて、それから…


あれ?その後、どうしたっけ?


その後の記憶がない。どうしてかわからない。寝てしまったんだろうか?

変な顔をしていると、謙信が近寄ってきて言った。

「お主を、信玄のもとから、攫ってきたのじゃ」

ふふっと笑った、謙信の、勝ち誇ったような表情に、ぞぉっと寒気がした。
< 116 / 347 >

この作品をシェア

pagetop