戦国遊戯
「さて、話の続きじゃ。啄木鳥の陣を使うななどということを知っておったくらいじゃ。お主は信玄の単なる妾ではないのだろう?」

「め、妾って」

「何より、柿崎とお主が対峙しておったとき、自分を守っておった、あの、幸村を、お主を止めるためにいかせたくらいじゃ。お主がよほど大切と見える」

くつくつと笑う謙信が、怖くて仕方がなかった。


どうにかして、ここを抜け出さないと。


「その、啄木鳥の陣を使うっていうのは、知りませんでしたけど」

とりあえず、答えてみた。

「ほう?しかし、慶次から聞いた話によると、お主、今までに川中島での戦の時に、武田軍が啄木鳥の陣を使ったことがあるかと、慶次に問うたそうではないか」

「聞いてみただけで、今回の戦で使われるかどうかなんて知らなかったもん」

「ふむ。まぁ、そういうことにしておいてもよいが」

慶次は隣で笑っていた。

「俺もよ、少し気になってな。今回の戦を見に行ったわけよ。そしたら、おあつらえ向きに霧も出てきて、別働隊が動き出した。玲子の言ってた通りの陣をしいたとみえた」

眉をひそめる。

「慶次から話を聞いて、あの霧じゃ。万が一を考えて、こちらが先に動いたというわけじゃよ」

ほほっと笑った謙信の顔に、苛立ちを覚えた。いや、腹が立ったのは自分自身に、か。


あの時、私が、うかつにも聞いたから…


ぎゅっと唇をかみ締めた。
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