戦国遊戯
「…慶次さんは、謙信の味方なの?」

もはや呼び捨てだ。さん付けで呼ぶのも嫌になる。

「いや?俺とこいつは、ただの酒飲み友達だぜ?」

なぁ?と話しかけると、謙信はにたりと笑った。

「そうじゃ、ただの友達じゃ。ふふ、自分の言った一言で、武田軍の軍略を見抜かれたことが、相当腹立たしいようじゃのう?」

謙信に言われて、目をそらした。

「まぁよい。お主にはしばらく、ここに滞在してもらうことになるからの」

「はぁ!?」

「ふふ、お主はよい目をしておる。柿崎に向かっておったときの、あの、なんとも言えぬ気迫もな」

ぎりっとこぶしを握った。

「ふざけないで!はやく私を帰してよ!」

「うん?帰りたくば、お主の力で帰ればよかろう?」

意地悪く笑う謙信。

「もっとも、ここから甲斐の国までは、歩いていけば相当な時間がかかるがの。それでもよければ、好きにするがよい」


…っ!こんのばばぁ!綺麗な顔して性格チョー悪い!


「そうそう、わらわの住まう屋敷じゃ。警備も相当なもの。お主が勝手に出て行けぬよう、周りのものには、そう、伝えておる」

謙信はそう言うと、すっと立ち上がった。

「……あぁ、わらわはよいものをひろぅたわ」


ははは、と笑いながら、その部屋を出て行った。
残された私は、ただ、その後姿を目で追うしかできなかった。


悔しさでいっぱいだった。
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