戦国遊戯
どれくらい歩いただろうか。自分でも、過去最高記録ではないだろうかと思うくらい、山の中を歩き回った。


中学校のときの、遠足以来だわ、きっと。


少し疲れてきた体を時々休めながら、玲子は歩き続けた。

一応、頂上に行っても仕方がないので、木に目印をつけながら、少しだけ傾斜のついている地面を、下へ下へと降りていたのだが、一向に麓らしき場所が現れない。


さすが夢。なんてこったいぃ。


はぁ、と息をつきながら、見えてこない先をじっと眺めた。


でも、夢なんだしさぁ、もうちょっと都合よく、すぐに出口になってくれたって、バチはあたらんくない?


はぁはぁと、必死で歩き続けること数時間。
どこからともなく、音が聞こえてきた気がした。思わず立ち止まり、聞き耳を立てる。

「・・・何これ・・・・・・蹄の音?」

音のしている方を探し出して見てみる。すると、かすかにだが、馬に乗った人の姿が見えた。誰だろうか、と、さらに目を凝らしてみていると、どんどんこちらに近づいてくるのがわかった。

「に、逃げたほうがいいかな・・・」

少しだけ嫌な予感がした。こういう予感は意外と当たるもので、逃げようかどうしようかと迷っているうちに、あっという間に、目の前まで、その人はやってきた。

そして、槍が玲子めがけて飛んできた。

「ひっ…!」

びぃーんと切っ先が玲子の後ろにあった木に突き刺さる。あと数ミリでもずれていれば、玲子の喉に突き刺さっていただろう。

「・・・貴様、何者だ」

馬上から、男の人の、低く、ドスのきいた声で問いかけられた。ごくりと唾を飲み込んだとき、首に軽い痛みが走った。玲子は意識が遠のきそうになるのを必死でこらえて、何とか声を絞り出した。

「あの・・・青柳玲子です」

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