戦国遊戯
「まったく。あんなに笑う必要ないじゃん」

ぶちぶちと文句を言いながら、長い廊下を歩いていた。大きな建物で、正直、家の中なのに迷子になりそうになる。

「ほんっと…なんでこんなに無駄に広いのよ!」

どこをどう行けばいいのかわからず、どんどん、と、その場で足踏みした。はぁ、と息をついて、周りを見渡した。

「確か、迷路とかって、どっちか一方の手で壁をなぞりながら、ずっとそれにそって歩けば、出口に着くとかって、なんかで聞いたっけ…」

そう言って、左手を壁につけて、歩き始めた。ぼぉっと進んでいると、遠くでこっちを見ている人影があるのに気づいた。

「?」

首をかしげて、目を細めて相手を見ようとした。すると、その人影は気づいたのか、ぱたぱたと、その場を立ち去っていった。

「??」

なんなんだろう?と不思議そうにその光景を見ていると、後ろから声がした。

「お主…!なぜここに!?」

その声に、殺意が甦る。振り返ると、やはり、予想通りの人間が立っていた。

「柿崎…!」

そう言って、腰に手を当てる。


あれ?


ぱしぱし、と、腰の周りを叩いて気づいた。脇差がない!それに、私の服とバッグもだ!

「あ…!ない!」

慌てふためく私を、柿崎はお構いなしに壁にだん!っと押し付け、腕で喉をぐぃっと押さえつけてきた。

「うっ…ふっ……」

鋭い眼光で、柿崎がにらみつけてくる。

「貴様、なぜここにいる!答えろ!」

が、柿崎の腕が喉を押さえつけているため、うまく息を吸うことすらままならない。言葉を発することも、当然のこと、できなかった。

「がっ!」

柿崎の腕の力が強まる。


こいつ、答えろとか言っときながら、これじゃ答えらんない!バカじゃないの!?


腕をばしばしと叩いた。が、柿崎の力は弱まることはなかった。
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