戦国遊戯
「おぉ、柿崎のおっさんじゃねぇか」

聞きなれた軽い口調の声が聞こえてきた。遠くなりそうな気を、何とか踏ん張り保って、声のするほうを見やると、そこには慶次の姿があった。

「お前…前田の。貴様、また性懲りもなく、謙信様のところへ来たのか」

ちっと舌打ちをする柿崎。そんな柿崎を気にするでもなく、肩をぽんぽんと叩き、耳元で囁いた。

「こいつは謙信の客人だぜ?手荒な真似すんのは、やめといたほうがいいんじゃねぇかぃ?」

にたり、と笑っていう慶次に、不審そうなまなざしを向ける。

「第一、そんなに喉を押さえつけられてちゃ、答えようにも答えられねぇと思うぜ?おっさん」

苦虫を噛み潰したような顔をしながら、渋々、柿崎は喉から腕を放した。

「…おい、さっきの話は本当なのか?」

忌々しそうな顔をして、柿崎が聞いてくる。

「げほっ…なにが」

むせながらも、玲子も負けないくらいの表情で、言い返す。

「貴様、本当に謙信様の客人なのか?」

「知らないわよ、あいつが勝手にさらってきただけ」

「貴様、無礼な!」

そう言って殴りかかろうとする柿崎。さっきは不意をつかれたが、今度はそうはいかない。

「あなたこそ、貴様貴様って。そっちの方が無礼じゃない!」

柿崎をよけてカウンターを入れようとする。が、失敗して、ふった腕がむなしく中をまった。

「はいはいはいはい!そこまでそこまで」

慶次がため息をつきながら仲裁に入った。
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