戦国遊戯
「喧嘩するのは全然いいが、あいつのいないところで、お前ら2人が喧嘩したら、俺が殺される」

「止めるな!」
「止めないでよ!」

2人の声がハモッたとき、慶次の後ろから、殺気めいたものを感じた。びくっとなって、恐る恐る見てみると、にっこりと笑った謙信の姿があった。

笑っているのに、なぜか怖いと感じた。今、近づくとまずい、と。

「わらわの居らぬところで、楽しそうなことをしておる。のぅ?柿崎」

名前を呼ばれた柿崎の顔色は青かった。すぅっと細めた目で見つめられると、柿崎は足を折り、その場に跪いた。

「申し訳ございません。武田の軍にいた者が、謙信様のお屋敷におりましたゆえ」

謙信は、その柿崎の姿を見て、ほほ、と笑った。

「よい、柿崎。面をおあげ。主はほんに、わらわ思いじゃ」

くつくつと笑いながら、柿崎の頬に、するりと手を滑らせた。柿崎の頬が、少し赤くなる。

「柿崎、この娘は、わらわの客人じゃ。丁重にもてなせ」

ふふっと笑って、こっちを見てきた。

「玲子。お主、柿崎と闘ってみたいかえ?」

「………」

謙信の問いかけには、何も答えなかった。

「ふふ、ほんにお主は面白い。では、柿崎と闘って、勝てば、帰る機会を与えよう」

その言葉に、ぴくりと体が動く。

「悪い話ではなかろう?ゆっくりと考えるがよい」

そのまま謙信は笑いながら、その場を去っていった。
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