戦国遊戯
しばらくの間、慶次を挟んで、柿崎と玲子はにらみ合った。

「ゆっくりとしていくがよい」

ちっと舌打ちをして、柿崎は踵を返して、屋敷の奥へと消えていった。その柿崎の後姿に向かって、べーっと舌を出した。

「なぁ、玲子。町に遊びに行くか?」

慶次がぽりぽりと頭をかきながら尋ねてくる。

「へ?」

「気分転換にでも、町にいかねぇか?」

慶次の申し出はありがたかった。そのまま、慶次をまいて、逃げ出すのでもいい。

が。

「嬉しい申し出なんだけど、やめておく」

「なんでだ?」

不思議そうに聞いてくる慶次。私は少し苦笑いしながら答えた。

「…服がないから」

「え?」

「服。だって、これ。寝巻きでしょう?私がもともと着てた服がどこにあるのか知らないし。このままじゃ出られない」

答えると、慶次は笑って答えた。

「そんなことか。それなら、ほら」

そう言って、慶次は羽織っていた着物を着せてきた。

「これで大丈夫だろう?さぁ、行くぞ!」

そう言って腕を引っ張ってきた。

「うわぁ!ちょ、ちょっと!」

足がもつれそうになるのを何とか踏ん張る。が、さすがに力でかなうわけもなく、そのままずるずると連れて行かれた。
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