戦国遊戯
一瞬でも気を抜けば、立っていられない。脳が考えることを放棄したがる。が、それを気力でなんとか持ちこたえる。そんなことをすれば、きっと、殺されてしまう。そう思ったのだ。

「・・・・・・どこの手の者だ。答えよ」

ぎらりと目を光らせて聞いてくる。

「どこって言われても・・・わかんない」

しどろもどろになり、答えに詰まる。今の状況や、場所がよくわかっていないこの状態で、そんなことを聞かれてもわからない。恐怖と不安で、目に涙がたまった。
玲子の答えが不満だったのか、目の前の男は眉をひそめた。

「わからない?…ふん、では、どこからやってきた」

相変わらず、鋭い目線で、こっちを見る。


――――怖い。


「それも、わかりません。気づいたら、ここに」

さらに相手の眉間にしわがよった。何でこうもバカ正直に答えているのだろうかとも思ったが、嘘をつこうにも、うまい言い訳が見当たらなかった。
自分の今の状況が理解できないということもあるが、なにより、目の前の相手の格好が、なんだか時代劇でよく見かける格好に似ていたからだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

相手の男は何も言わず、槍を木から抜き取った。痛みの走った部分をそっと触ってみると、ぬるっとした感触が、手に伝わってきた。


うそ…


思わず腰が抜けそうになり、その場にへたり込んだ。

「はやく、ここから立ち去れ」

睨みつけながら男が言う。
が。

「・・・そうしたいんですけど」

少し困惑した表情を浮かべながら玲子が口を開く。

「なんだ?」

「・・・すぐには、動けそうにないです・・・」

少しの間、目の前の男と、見詰め合うような格好になった。
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