戦国遊戯
謙信の屋敷についた頃には、すでに日も傾き、薄暗い空に、細い月がうっすらと浮かんでいた。
時折、慶次は、馬を止めては、辺りをきょろきょろと見回していた。


屋敷に着くと、青白い顔をした私を馬から降ろし、中に連れて行ってくれた。

「おや、慶次に玲子じゃないか。夕餉の支度ができた。食べにおいで」

後ろから声が聞こえた。振り返ると、謙信の姿があった。

「ふふ、どうしたのじゃ?玲子。そのような青白い顔をして」

意地悪く言ってくる謙信に、言い返す気力もなかった。

「慶次、玲子を部屋へ連れておいで。迎え酒じゃ」

ふふっと笑って言う謙信に、いいねぇ、と、慶次は言った。そして、そのまま、部屋へと連れて行かれた。


「あ゛あ゛あ゛…」

謙信と慶次に、二日酔いで気分が悪いときには、迎え酒で少量の酒を飲むとすぐに治る、と、言われたので、飲んだが。

「なんか気持ち悪いぃ」

うぅ、と食事中にもかかわらず、ごろんと横になった。

「おや、玲子大丈夫かえ?」

「お行儀悪くてごめんなさいぃ」

うぅ、とうなりながら横になる。

「ほほ、気にせずともよい」

笑いながら、謙信は慶次と酒を酌み交わした。


外から、心地良い風が流れ込んできた。お酒の酔いが、風で少しさめるような感じがした。

すぅっと、そのまま、深い眠りへと誘われた――。


甘い香りがして、目が覚めた。気がつけば、布団の中にいた。

「いっ…つー…」

体を起こすと、頭がずきずきとした。
この痛みには覚えがある。


二日酔い。


またやってしまった。

深いため息が出た。

ふと、外を見ると、すでに日が、かなり高く上っていた。
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