戦国遊戯
***** 幸村's View *****

「お館様!佐助が玲子を見つけました!」

ばたばたと走っていき、信玄の部屋の襖を、ばぁん!とあけた。

「ぐふっ…!」

どんどん!と胸を叩く信玄。顔が真っ赤になった。慌ててそばにいた侍女が、水の入った湯飲みを渡した。

「っはぁ!な、何事だ、一体」

目に少し涙をため、げほげほとむせながら聞きく信玄。

「も、申し訳ございません、お館様。玲子が、玲子が見つかりました!」

幸村の一言に、信玄はなに!?と立ち上がった。目の前に用意されていた食事がひっくり返った。

「どこじゃ、どこにおった!」

聞いてくる信玄に、幸村は少し言いにくそうな表情で答えた。

「それが…上杉の領土で、前田慶次と一緒にいるところを発見したとのことで」

「なに!?」

信玄の眉が、ぴくんとつりあがった。

「お館様、いかが致しましょうか」

「ふむ…」

考え込む信玄。上杉の領土にいるとなると、下手に顔の知れている幸村たちを行かせて、連れ戻すわけにはいかない。

「…連れ戻すことはできなかったのじゃな?」

念のため、と、確認する。幸村は、悔しそうな顔をして、頷いた。

「はい。佐助の話によると、人がかなり集まっており、こっそりと連れ出すのは困難だった、と」

「………」

「後をつけたところ、上杉謙信の屋敷へと入っていったそうです」

はぁ、と信玄はため息をついた。
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