戦国遊戯
「お館様!申し訳ございません、遅くなりました!」

「きたか、行くぞ!」

そう言って、信玄は馬を走らせた。幸村もそれに続き、さくらが酒樽を積んで、さらにその後に続いた。

まだ、空の色も薄暗く、夜明け前。越後までは、馬をかなり急がせたとして、ぎりぎり夕方に到着するかどうか、と、いったところだ。道中、何度か馬を休ませるため、休憩をとったりしたが、幸村も信玄も、無言だった。2人の心中を察したのか、さくらも無言で、ただ、2人の後についていった。


正直、謙信からの返事を待たずに行くというのは大丈夫なのか、と、不安はあった。酒を飲もうという誘いで、謙信が断らないとしても。門の中に入れるかと考えれば、果たして。


佐助からの連絡を待ってからでも良かったんじゃないだろうか。


行ったはいいが、門前払い、となると、玲子の奪還方法も変わってくる。そうなると、今の軽装備では、いろいろと対応できる方法が限られてきてしまう。

いや。

俺は、お館様を信じて、今は、玲子のいる、謙信の屋敷まで、急ぐのみだ。



日も傾き始め、あたりで吹いていた風も、少しだけ冷たくなってきた。


越後まで、あとわずか、か。


越後の国まで、あとわずかといったところで、佐助が現れた。


「総大将!」

3人とも、馬を止めた。

「佐助か」

「謙信からの伝言です。月が昇るまでの間に、屋敷へ来い。余興を共に、楽しもうぞ、とのことです」

「わかった。佐助は屋敷周辺で監視を頼む。いざというときは、頼りにしておるぞ?幸村、さくら!急ぐぞ!」

『はっ!』

屋敷へと4名は急いだ。
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