戦国遊戯
『若!』

さくらと佐助の声がハモッた。びくっとする幸村。どうやら、幸村も、2人には頭が上がらないようだ。

こんなたわいもないやり取りを繰り返す日々。
幸村のことをゆっきーと呼ぶようになり、(ちなみに、信玄はしんちゃんで定着した)こうしたやり取りもするようになった。

正直、元の世界へ戻る方法を探しても、見つからないんじゃないか。もう、戻れないんじゃないか。そう思うこともあった。


そして。



もう、戻れなくてもいいんじゃないか。


そう、思うこともあった。


元の世界への執着も、愛着も。今はびっくりするくらい薄れていた。両親や親友、そういった大切な人たちがいる世界だが、こっちの世界にも、少しずつ、大切な存在ができてきていて。正直、自分がどっちの世界にいることが正しいのか。わからなくなっていた。

「では、仕事があるので。さげますね、これ」

そう言って、からになったお皿を持って、さくらは部屋を出て行った。佐助も、そのまま部屋を出た。

「気になるねー」

「そうだなぁ…でも、場所が尾張じゃぁ…俺は無理だな」

「あ、そっか。そうだよね」

尾張には信長がいることくらいはわかっている。そして、やたらめったらと、足を踏み込むことはできない、ということも。

「仕方ないか。おばあちゃんのところにでも行ってこようかな」

そう言って、膝をぱん!っと叩いて立ち上がった。

「そうか。気をつけてな」

幸村はにこっと笑って、玲子の頭をぽんぽんと叩いた。玲子もにこっと笑った。
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