戦国遊戯
「これからどこに向うのだ?」

言われて、苦笑いしながら頭をかいた。

「どこ、と言われても。その・・・行く当てなんてないですし」

と、言った瞬間、あることに気づいた。

「・・・私、お金もない!」

愕然とした表情になる。ぱたぱた、と、体を触ってみて、腰の部分に、シザーバッグのようなものを腰につけているのに気づいた。中をあけてみると、携帯電話とライター、チョコレートがいくつか入っていて、バッグの横には、水のようなものが入ったペットボトルがぶら下がっていた。

当然だが、お金などない。
玲子は頭を抱えた。

この世の終わりともいえるような表情で打ちひしがれていると、さすがに心配になったようで、幸村が恐る恐る声をかけてきた。

「…おい。もし、行くあてがないのなら、俺の家に来るか?」

「え?」

「いや、今にも死にそうな顔をされたら、誰でも心配になるだろう」

「あ、ありがとうございます!」

幸村の優しい言葉に、思わず玲子は抱きついた。


さすが夢!


そしてその瞬間、幸村が私の体を引き剥がした。

「お、おぬし女か!?」

「は?」

顔が真っ赤になっている幸村。対して、玲子はみるみるしかめっ面になる。


ちょっと…どういう意味よ…


じとっとした目で、幸村を見る。幸村ははっと我にかえると、コホンと咳払いをした。

「あ、いやその…」

確かに髪はくくっていて短く見えるし、普段からよく男に間違われることもあった。
が、今は何より制服を着ていて、スカートをはいているのだ。

「いくらなんでもひどすぎません?女の子に対して、さっきの発言」

声だって、別段男っぽいわけではない。さすがに電話越しに男に間違われたことは、片手で数えるくらいしかない。

「す、すまない…」

申し訳なさそうに頭を下げる幸村に、玲子はため息をつき、気にしてない、と呟いた。
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