戦国遊戯
「…退くぞ」

敵の1人がそう呟くと、2人の姿が消えた。ほっと息をつくのもつかの間、駆けつけた数人の男が、玲子を取り囲むようにして刀を突きつけてきた。

「な、なになに!?」

思わずその場にへたり込む。チラッと眼帯の男の方を見やる。

「あれほど1人で出るなと申し上げたはずです、殿」

「うるせぇな、相変わらず」

面倒くさそうに小十郎の顔を見やった。

「あの~…お話中のところ、申し訳ないんですけど、この人たち、なんとかしてくれません?」

苦笑いを向けると、眼帯の男は笑いながら近づいてきた。

「お前ら、刀を下ろせ」

一言で、刀は一斉に収められた。

「お前、何者なんだ?」

ぱんぱん、と土を払う。ずきずきと痛むおなかをさすりながら、玲子は答えた。

「何者ってほどの者でもないんですけどね。ゆっきーに居候させてもらってる身だし」

あはは、と笑いながらぺこりとお辞儀をした。

「えと、私は玲子。服、貸してくれありがとう。それと、助けてくれてありがとう」

へへっと笑いながら答えると、眼帯の男は、玲子の顔や体をぺたぺたと触ってきた。

「何者でもないねぇ…」

頬をつぅっと触って顎をくっと持ち上げ、じっと玲子を見つめる。端整な顔立ちの男前に見つめられて、思わず体が硬直する。

「玲子、と言ったな。俺は政宗、伊達政宗だ」

そう言うと玲子の耳元で囁く。

「気に入ったぞ?玲子」

頭がぼうっとする。思わず、政宗の方を見た。すると、政宗は、にっと笑って、玲子の唇に、自分の唇を重ねた。
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