戦国遊戯
自分に起こった出来事が、まったく理解できなかった。軽いパニックに、頭が混乱する。政宗はふっと笑って、玲子に呟いた。

「玲子。俺の嫁に来ないか?」

『殿!?』

政宗は、周りを制止して、じっと、玲子の目を見つめる。

「玲子。お前のあの身のこなし、荒削りではあるが、そこいらの女など目ではない。俺は、玲子のような女が欲しいんだ」

今までの人生で、これほどまでに熱烈な告白を受けたことがない玲子は、思わず顔が真っ赤になった。

「な、なにをいきなり」

思わず声が裏返った。思わず政宗のそばを離れた。
そのときだった、馬の蹄の音と共に、1人の男性が現れた。

「いた、玲子!」

玲子と政宗の間に、ちょうど割って入るような形で馬に乗った幸村の姿があった。

「夕餉になっても戻ってこないし、まさかと思ってきてみれば。大丈夫か!?」

馬から降りて、玲子のそばに駆け寄る。大丈夫、と、玲子が頷くと幸村は安堵したように息をついた。

「よかった。が、お主たちは何者だ?名乗られよ!」

幸村がギッと政宗をにらみつけた。政宗の左目がギラッと光る。

「違うの!政宗さんは、私のこと、助けてくれた人で、悪い人じゃ」

「政宗!?まさかその右目の眼帯…奥州の伊達政宗!?なぜここに」

目を大きく見開いて政宗の顔を見る。政宗は笑って近づいてきた。幸村が身構える。
が、政宗はその横をすっと通り過ぎ、玲子の前に立った。

「ふふ、ま、会ってすぐだ。答えを求めるのも無粋というものだな」

そう言って、ゆっくりと顔を撫でてきた。思わず玲子の体がびくんと反応した。

「また、近いうちに会いに行く。そのときにゆっくりと話をしようではないか」

にこっと笑って玲子の額にまた、軽くキスをした。玲子はその場にへなへなっと座り込んだ。

「なっ…!」

幸村が唖然とした表情をする。

「行くぞ、野郎共!」

政宗はばっと身を翻し、小十郎たちと共に、その場を去っていった。
< 197 / 347 >

この作品をシェア

pagetop