戦国遊戯
「お館様!お館様!」

信玄の屋敷の中の廊下をバタバタと走り回る幸村。屋敷の置くの部屋に、信玄と女性の姿を発見する。幸村は慌ててひざをつく。

「どうした、幸村。こんな夜更けに。何事じゃ」

信玄が眉をひそめながらも、幸村のこの状態に、ただ事ではないということを感じ取り、側にいた女性を下がらせた。

「はっ。急に申し訳ございません。お館様のお耳に入れたい話が少々」

そう言って、信玄の側により、耳打ちした。

「…なに?織田、だと?」

幸村は黙って頷いた。

「それで、さくらがまだ戻ってこないもので、才蔵と十蔵を向かわせたいのですが」

「なに、さくらが?」

幸村は俯きながら頷いた。

「佐助があの様子にもかかわらず、さくらが戻ってきていないということは、万が一ということがあります。なんとかさくらを助けたいのです」

ぎりっとこぶしを握り締める。

「わかった。さくらを無事に連れ戻すのじゃ」

「ありがとうございます!」

深く頭を下げ、幸村は信玄の屋敷を出る。


「才蔵、十蔵!」

大きな声で2人を呼ぶ。幸村の元に、どこからともなく、すっと2人の男性が現れる。

「聞いたな?すぐにさくらの捜索、救出に向かえ」

『はっ』

2人の姿が消えた。幸村は馬に乗り、自分の屋敷へと戻った。
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