戦国遊戯
希美の言葉に納得する。が、どうしても、信じたくない部分が1つだけあった。

「ね、希美。田中くんは、敵なのかな」

玲子の言葉に、少し希美は戸惑いながら答えてきた。

『残念だけど、多分、ね。少なくとも6人は、田中君に殺されたわけだし、れいちゃんも現に狙われてるんでしょ?』

希美の言葉に深いため息が出た。

「どうにかできないのかな」

『わかんない。田中君次第じゃないかな。でも、れいちゃん。このままだと、殺されちゃうんだよ?絶対に、生きて帰ってきてよ!?』

「うん、わかってる」

そう言って、電話を切った。


希美との電話のあと、玲子は佐助の部屋へと向かった。
そっと部屋の中に入ってみると、佐助が眠っていた。額に置かれていた手ぬぐいが少しずれてしまっていたので、直そうと手を伸ばす。すると、佐助の手が玲子の手をつかみ、そのまま畳に叩きつけ、押さえ込まれた。

「いたっ!さ、佐助、痛い!」

はぁはぁ、と、肩で息をしながら、佐助はうつろな目で玲子を睨みつけていた。

「佐助、離して!私だって、玲子だってば!」

下手に動いて、佐助の傷がまたひろがったらまずい。そう思い、必死で佐助に呼びかける。

「佐助!しっかりして、目を覚ましてよ、佐助!」

そのときだった、襖が開き、佐助を布団に押さえつける影があった。

「ゆっきー!」

自由になった腕がずきずきと痛む。佐助は幸村の顔を確認すると、また、眠りについた。

「大丈夫か?玲子」

佐助が眠ったのを確認すると、幸村は玲子の体をぺたぺたと触って確認する。

「うん、大丈夫。それより、佐助は?」

ちらっと佐助を見るが、特に傷がひろがった様子もなく、ほっと胸をなでおろした。
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