戦国遊戯
幸村は玲子の手を取り、佐助の部屋を出て、自分の部屋へと連れて行った。

「ゆっきー?」

いつもとは、何か違う表情をしている気がして、思わず声をかけた玲子。幸村は何も言わず、部屋の縁側へと玲子を座らせた。

「玲子、この間尾張へ行ったとき、何かなかったか?」

幸村に聞かれて、ドキッとする。

「それは…その…」

真剣な幸村の表情に、玲子は落ち着いて、ゆっくりと話始めた。

「信長に…会ったのか…」

「うん…それに、私と同じ時代からきた子にも会った」

玲子の言葉に、幸村は少し面食らったようだったが、しばらくの沈黙の後、ふぅ、と息をつくと、玲子の頭をぽんぽん、と撫でてきた。

「その、同じ時代から来たという人物は一体?」

幸村に聞かれて、さっき希美と話していた内容も合わせて伝えてみた。幸村の表情はかなり険しくなっていた。

「では、その田中という人物は、玲子のほかに、お館様を狙っている可能性もあるというのか?」

「うん、多分…」

確信があるわけじゃない。ただ、その可能性は、限りなく高いと思ったのだ。

「上杉、北条…それに、伊達」

伊達、その名前が出てきて、玲子は少しからだが硬直した。幸村は玲子の正面に立つ。

「玲子。この間、政宗と何があった?」

「へ?」

思わぬ質問に、玲子は気の抜けたような変な声が出た。

「玲子はその、政宗のことを、どう、思っているのだ?」

じりっとにじり寄られ、玲子は苦笑いを浮かべる。

「どうって、そんな、こないだ会ったばっかりなのに、どうもなにも」

じっと見つめてくる幸村の目から、思わず視線をそらしてしまった。
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