戦国遊戯
「さくらを見つけました。幸い、軽い怪我ですんでおりました。ただいま、十蔵が手当てをしております」

「ご苦労。すまない」

「では、向こうの部屋でお待ちしております」

そう言うと、才蔵はさっと姿を消した。幸村は、才蔵のいた方を向いたまま、こっちを見ない。玲子は、そっと幸村の顔を覗き込んだ。

「…ゆっきー、顔、真っ赤だよ?」

明かりのせいかも知れないが、耳まで真っ赤な幸村をみて、思わず玲子は噴き出した。

「な、玲子!?」

慌てふためく幸村に、玲子はおなかを抱えて笑った。

「もう、あんなことするから、どうしたのかと思ったけどさー、あははは」

少し、涙が出てきた。笑いすぎなのか、それとも、安堵したからなのかはわからなかったが。

「玲子、すまない。どうかしていた」

幸村がふいっと顔を背けながらも、少しうなだれた風に謝った。玲子は涙を拭きながら、深呼吸をして、笑いを必死で止めた。

「どうやら、俺は、玲子のことが好きなようなのだ」

ストレートに言われた告白に、玲子は一瞬面食らった。どうかしていた、という言葉から、まさか告白につながるとは思ってもいなかったからだ。
幸村は、自分の言葉に頷きながら、玲子の方を向きなおした。

「玲子、俺は、お主のことが好きだ。だから、嫁にきてはくれないだろうか」

「は!?」

「返事はすぐにとは申さぬ。ゆっくりと考えてくれればいい。今は、まずは織田の手の者を、何とかせねばならないからな」

そう言って、幸村は立ち上がると、玲子にすっと手を差し出してきた。

「さくらのところへ行くが、玲子も一緒に来るか?」

言われて、玲子はこくんと頷き、幸村の手をとった。
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