戦国遊戯
玲子はすとんとまた、幸村の隣に腰を下ろした。そして、何かを思い出したような顔をして、口を開いた。

「そうだ。助けてくれてありがとう。まだきちんとお礼を言ってなかった気がする」

そういって、ぺこっとお辞儀をした。幸村は、いや、と手をふった。

「俺でなくとも、森の中で困っている人がいたら、誰だって放ってはおけんだろう」

そう笑って言った。
その言葉と表情に、胸が"トクン"となった。

「でも、幸村さんに仕えてる方たちは、私のこと。よく思ってないよ?」

「・・・あいつらも悪気があるわけじゃない。ただ少し、心配性なんだ」


心配性。
・・・さすがにそんな理由で殺されるのはいやかも。


とは思ったものの、時は戦国時代。


――――仕方がないのかもしれない、かも。


そうも、思った。

「主君思いなんですね、みんな」

「そうだな。俺のことをとても心配してくれて、気にかけてくれている」

そう言ったときの、幸村の表情は、とても穏やかで、優しいものだった。
その表情に玲子はまた、"トクン"と心臓が音をたてた気がした。
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