戦国遊戯
がさがさっと音がした。音のした方を見ると、見覚えのある大柄な男の姿があった。

「慶次!どうしてここに?」

玲子が言うと、政宗はむっとした表情で、玲子の腕を引っ張り、体を自分の方へと引き寄せた。

「おう、近くを通りかかったもんでな…お楽しみのところ、邪魔するつもりはなかったんだがね」

にっと笑う慶次に、玲子はあわてて否定した。

「ち、違っ!」

慶次はわかってる、と言って、笑った。そして、政宗の方をチラッとみた。

「で、そっちは…隻眼ってことは、奥州の独眼竜・伊達政宗かい?」

政宗は何も答えなかった。なんともいえない雰囲気に絶えられなくなった玲子が、口を出した。

「ああ、そうそう!えっとね?こっちは慶次の言ってる、奥州の伊達政宗」

軽く政宗を紹介する。

「政宗、こっちは、友人の慶次」

「よろしくな」

政宗に慶次を紹介すると、慶次は二カッと笑った。政宗はふいっと目をそらした。


「ところで玲子。お前さん、どうしてこんなところにいるんだ?」

聞かれて、玲子は言いにくそうに答えた。

「田中…学くん。彼に会いに」

すると、慶次の顔が険しくなった。

「今から、か?」

言われて、玲子はこくんと頷いた。

「…やめたほうがいい」

「どうして?」

慶次に言われて、玲子は眉を顰めた。

「今、尾張は少しおかしいんだ」

慶次の言葉に、玲子と政宗は顔を見合わせた。
< 234 / 347 >

この作品をシェア

pagetop