戦国遊戯
「あの田中って野郎が、信長に仕えてからというもの、藤吉郎は信長に近づくことを禁じられたらしい」

「え？」

慶次の言葉に、いろんな想像が頭をよぎっていった。

「それに、きな臭い噂が、町で飛び交っててな」

慶次の言葉に、政宗は眉をぴくりと動かした。

「信長の暗殺部隊が、暗躍してるってな」

その言葉に、玲子と政宗はバッと慶次を見た。

「…慶次は、どっちの人間なの？」

玲子が聞くと、慶次はふっと笑った。

「どっち、てぇと？」

聞き返されて、玲子はふっと息をついて、口を開いた。

「慶次が敵だとは思ってない、し、そうだとは思いたくない」

玲子はじっと慶次の目を見て続ける。

「だけど、前田家は織田に仕えてる」

大きく息を吸って、玲子は口を開いた。

「慶次は、信長に私を殺すように命令されたら、私のこと、殺す？」

玲子はぎゅっと両手を握り締めた。少し手が震える。
慶次は玲子の方にすっと近寄る。玲子はじっと慶次の目を見つめたままだ。

「殺さねーよ」

玲子の頭をぽんぽん、と撫でる。玲子はホッと安堵の表情を見せる。

「前田は、確かに織田に仕えているが、俺は信長の家臣じゃねぇ」

にっと笑う慶次の顔に玲子は微笑んだ。
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