戦国遊戯
「玲子、先を急ぐぞ」

政宗がぐいっと玲子の腕を引っ張った。

「え、どうしたの?急に」

「急がねーと、時間が無えんだろ?」

政宗に言われて、玲子は黙って頷いた。

「よっし!俺も行くぜ!」

慶次の言葉に、玲子は驚いた。

「えぇ?でも、私たちと一緒に行動しているのがばれたら」

そう言うと、慶次は大丈夫、と、笑って答えた。

「玲子、行くぞ!」

政宗が不機嫌そうに玲子の腕を引っ張る。玲子は困惑した顔をするが、慶次にありがとう、と言うと、馬のほうへと駆け寄った。

政宗が玲子を馬に乗せようとしたときだった。
慶次がいきなり、後ろから、ひょいっと玲子をお姫様抱っこしてきた。

「け、慶次!?」

びっくりする玲子をよそに、慶次はにっと笑って、自分の馬へ乗せた。

「てめぇ、何を…!」

政宗がギロリと慶次を睨むと、慶次はきょとんとした顔で答えた。

「お前さんの馬、結構疲れてるみてーだからよ。そいつに2人乗せるってのはかわいそうだと思ってな。それに、松風も久しぶりに玲子に会って、乗せてぇって言ってんだ。なぁ、松風?」

松風は頭を上下に振る。そのまま、慶次は玲子を乗せて、松風を出した。

「おい、待て!」

政宗も慌てて2人を追いかける。

「…慶次?」

おずおずと玲子が声をかけると、慶次は、にっと笑ってきた。

「なぁに、あいつもこれで、少しは頭が冷えるだろう」

慶次にどこまで見られていたのか、恥ずかしくて聞くに聞けなかったが、慶次のその思いやりに、玲子はありがとう、と呟いた。

そして、3人は一路、尾張へと急いだ。
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