戦国遊戯
***** 幸村's View *****

「では、今晩は世話になる」

幸村とさくらは、馬を預けると、お金を払って、部屋の中へと入っていった。宿屋の2階で、ちょうど、外に面した小さな障子を開けると、城が見えるような場所になっていた。

「さくら、傷の具合は大丈夫か?」

幸村にきかれ、さくらは大丈夫です、と頷いた。

「それより、これからどうなさるのですか?」

さくらにきかれて、幸村は少し考え込んだ。

「すぐにでも攻め入ってやろうと思ったのだが…さすがにこれだけ疲れがたまっている状態では、成功するものも失敗しかねないからな。今日はもう休んで疲れをとり、明日、情報を集めた上で、夜に攻め入る!」

そういうと、さくらは頷いた。

「それじゃさくら、風呂にでも入っておいで」

「いえ、そんな…若の方こそ、先にどうぞ」

さくらが慌てて辞退すると、では、と、幸村は部屋を出て行った。
1階に降りると、風呂ではなく、そのまま外へ出て行こうとした。

「お客さん、お出かけですか?」

店の女将に聞かれて、少し飲んでくる、と言うと、幸村は笑ってそのまま宿を後にした。

幸村は途中でお酒を大瓶1本分購入して、それを少し飲んだ。ふらふらとした足取りで、城の周りや、その近くにある酒場を覗いていった。


「なんで!なんで殿はあんな男を!」

少し城から離れた場所にある酒場で、ぐだぐだに酔っ払っている男が1人いた。

「なー親父。俺は、ずぅっと殿に仕えてきたんだ!なのに、あのめがね野郎…急にぽっと現れたかと思うと…て、酒だ酒!親父、もう一本つけてくんな!」

だん!と徳利をテーブルにたたきつける。店の親父は、はぁ、とため息をつきながら、店の奥へと引っ込んでいった。
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