戦国遊戯
ふっと信長が笑うと、幸村はギリっと歯を喰いしばった。

「2人とも、地下の牢に放り込んでおけ」

信長の言葉に、兵達は頭を下げ、幸村とさくらを連れて行った。

「真田か…甲斐の虎、武田が動いたということ、か」

ふふっと笑う信長に、学は無表情に答えた。

「明日には、奥州にやった者達が帰ってくる頃でしょう。うまくいけば、青柳さん、いえ、玲子を連れて帰ってくるはずです」

信長は待ち遠しそうな顔をする。

「ふふ、さぁ…我が元へこい、玲子よ」

信長の笑い声が、城中に響き渡った。


「ほら、入ってろ!」

幸村とさくらは、同じ牢に入れられた。幸村は、さくらに必死で呼びかける。

「さくら!しっかりしろ、さくら!」

幸村がさくらの体に触れようとすると、さくらは手を払いのけ、叫んだ。目はまだ虚ろなままで、呼びかけにもまったく反応しない。


「さくら、目を覚ますんだ、さくら!俺だ、幸村だ!」

何度目の呼びかけかもわからないくらい、さくらの名前を呼び続けたそのときだった。

「わ…か……」

さくらの口から言葉が出た。

「さくら、さくら!俺だ、幸村だ!わかるか!?」

「わ…か?…若ですか?」

さくらの目に、見る見るうちに涙がたまっていった。

「よかった、さくら!しっかりしろ!」

そう言ってさくらの顔を持ち、まっすぐとさくらの目を見据えた。すると、焦点の定まっていなかったさくらの目が、だんだんと、しっかりとしはじめる。
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