戦国遊戯
「若!」

さくらは幸村に抱きついた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

泣きながら、ずっと、謝り続けた。

「いいんだ、気にするんじゃない」

幸村に背中をさすられながら、さくらはずっと、泣きじゃくった。

「若がそんなに簡単に捕まるはずが無い、そう思っていたんですが」



「あなたのお連れの男性の身柄は預かっています」

学の言葉に、さくらは耳を貸さなかった。

「言ったはずです。私は1人で泊まっていると」

学はため息をつきながら、さくらに言った。

「そうですが、お連れの男性は、宿屋に連れがいる、とおっしゃってましたが、違うというんですね?」

「だから、私は1人だと、何度も申し上げております」

さくらは、少し動揺するも、1人だと言い張った。

「まぁ、そこまでおっしゃるのなら、人違いなのでしょうが、なにせ、その男性が、あなたに会わせろと言ってきているのです。ご同行願えますか?」

幸村が、そんな簡単に捕まるはずもないし、万が一捕まったとしても、そんなに簡単に、仲間がいることをばらしたりはしないはず!そう、信じてはいるが、何か不測の事態が起こっているとしたら。
そう思うと、念のため、城には行っておいたほうがいいかも知れない。そう思ったのだ。

それに、万が一にも捕まったとしても、相手がこんなひょろっちい男なら、簡単に逃げられる。そう、思ったのだ。



「すみません、若をこんな目にあわせてしまい、本当に」

何度も頭を下げるさくらに、もう、気にするな、と幸村は笑った。その笑顔に、さくらはまた、涙が出そうになった。
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