戦国遊戯
「違う違う。そうじゃなくて。俺の嫁として、玲子を信長に会わせるんだ」

政宗はまだ、眉を顰めたままだ。

「いいか?今、玲子は命を狙われている。そのうえ、玲子が会おうとしている人物は城の中だ。玲子の命の保障をしつつ、城の中に入るには」

慶次がそこまで言うと、政宗は不満そうにしつつも、慶次の案に賛成した。

「確かに、前田の嫁となれば、そう易々と手は出せねーし、嫁を紹介するという名目であれば、城の中に入ることもわけはない、か」

慶次がニッと笑う。玲子は戸惑う。

「でも、もしもそれで、慶次に迷惑がかかったら…」

慶次は手を横にふった。

「だぁいじょうぶだ。そんときゃー、俺は前田と縁を切れば済む話だ」

軽く言う慶次に玲子はあせった。

「そんな、簡単に言うけど!」

この時代に縁を切るなんていうのは、特に、武士ともなると簡単な事ではない。それは玲子も知っている。

「だめだよ!」

そう玲子が叫んだとき、襖がすっと開かれた。

「すいません、お取り込み中でしたか」

襖を開けたのは店の女将だった。

「いえ、大丈夫です。どうかしたんですか?」

玲子が不思議そうに尋ねると、女将は言いにくそうな顔をする。

「あの、実は…ここの部屋、別の方が泊まってまして」

あやまってダブルブッキングしてしまったのか、と、玲子は納得したように、あぁ、と言った。

「要するに、別の部屋に移って欲しいってことですか?」

ストレートに聞いてみると、女将は首を横にふった。

「いえ、そうではないんです」

女将の言葉に3人は顔を見合わせた。

「他に部屋が空いておりましたら、確かにそちらへお移り頂いて、と思っていたのですが、あいにくと部屋がうまっておりまして」

玲子は、女将の言葉にふんふん、と、頷く。

「それで、もしもこちらの部屋の方が戻ってこられたら、相部屋ということになるのですが、よろしいでしょうか?」

恐る恐る聞いてくる女将に、玲子は首を傾げた。

「私達はかまいませんけど…相部屋になるって、ここに先に泊まってる方は了承されてるんですか?」

女将がさらに言いにくそうに、それが…と、続けた。
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