戦国遊戯
携帯のメモ機能を起動させ、ボタンを押して携帯に向ってしゃべる。

「私は、青柳玲子です。幸村さんのおうちにご厄介になっています」

ボタンを押して、録音をとめた。携帯を幸村に差し出す。

「ここの部分を耳にあてて、ここを押してみて」

幸村は、恐る恐る携帯を手に取ると、耳に当てて、ボタンを押した。

『私は、青柳玲子です。幸村さんのおうちに厄介になっています』

「何だ!?」

そう言って、慌てて幸村は携帯を耳から話した。佐助に首根っこをつかまれ、また、短刀をのどに突きつけられる。

「貴様!何をした!」

「何をって、何もしてないって。ただ、幸村さんに保存した"声"を聞かせただけ」

「声を保存?何を言っているんだ」

意味がわからない、といった風に佐助が答えると、幸村は、放すんだ、と、佐助に命じた。

「若!?」

「いいから。玲子を放すんだ」

しぶしぶと、佐助は短刀を納め、玲子を開放した。


もう、何回目よ…マジで。これ以上は勘弁して。


疲れ果てた、といった顔をしていると、幸村はそんな玲子にお構いなしに、目を輝かせながら聞いてきた。

「玲子、これには、俺の声も保存できるのか?」

聞かれて玲子は頷いた。

「貸して?」

携帯を受け取り、自身がさっき録音したものを消去する。そして、新たに録音の準備をした。

「どうぞ」

言ってボタンを押した。幸村は緊張気味に、携帯に向ってしゃべった。

「えー、俺は、真田幸村。お館様に仕えている」

携帯から顔を離すので、ボタンを押して、データを保存した。

佐助とさくらに聞くように、と、幸村が言った。二人は顔をみあわせながら、携帯に耳を近づけた。

『えー、俺は、真田幸村。お館様に仕えている』

驚いたような表情になる。

「若様!?若様の声が!」

2人は目を白黒させていた。
< 25 / 347 >

この作品をシェア

pagetop