戦国遊戯
「とにかく、まずは着替えを用意する」

慶次はそう言うと、宿を出て行った。

「どうしよう、政宗、ゆっきーとさくらが!」

慌てる玲子の肩をがしっとつかんで、政宗はまっすぐ玲子を見て言った。

「大丈夫だ。真田たちは、そんなにやわな奴らじゃねーんだろ?」

政宗の目に、玲子は少し落ち着きを取り戻す。

「そう、だね。…うん、そうだよ。2人は強いもん!」

玲子は大きく深呼吸をする。政宗は玲子の頭をぽんぽんと撫でた。

「大丈夫だ。何とかなる」

政宗のその言葉に、玲子は安堵した。


小一時間くらいたった頃だろうか、慶次が宿に戻ってきた。

「遅いよ、慶次!どこに行ってって…うわぁ!」

色艶やかな着物と帯が並んでおり、慶次の後ろには数人の女性の姿があった。

「慶ちゃん、この娘?」

「わぁ…お化粧映えしそうな肌やわぁ」

わらわらと玲子に女性が群がってくる。

「悪いが、急いで支度してやってくれねーか?」

慶次が言うと、女性たちはウインクをして任せて!と答えた。

「そしたらほらほら、殿方は外でまってて」

政宗と慶次は部屋を追い出される。状況のよく飲み込めていない政宗に、慶次は笑いながら説明をした。

「ほら、下向かんといて!」

「あぁ、こっちより、こっちの色のほうが合うやろか」

玲子の周りで、女性たちが忙しそうに、バタバタと着付けをしたり、メイクをしたり、髪を結ったりしていた。

「ほな、帯を締めるで?少しきついかも知れまへんけど、我慢やさかい」

そう言うと、女性はぎゅぎゅっと帯を締めた。

「ぎゃぁ!」

玲子はあまりの苦しさに、車にひき潰された蛙の鳴き声のようなものが出た。

「大丈夫、少しずつ緩んでくるさかい、このくらいが丁度ええんどす」

女性に言われて、玲子はくらくらしながらも踏ん張って立っていた。
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