戦国遊戯

リトライ

いたたまれない。

まさに、私の今の状況は、いたたまれないって言葉がぴったりだわ。


慶次が、ちょっと待っててくれ、と言って、不機嫌そうに俯いたままの政宗と玲子を残して、部屋を出て行った。部屋の中の雰囲気はとても耐えられるようなものではなく、玲子は許されるのであれば、今すぐにでもこの部屋を出て行きたかった。


べ、別に、私は政宗の彼女じゃないし?そんな、慶次に…き…キスされたとか…か、関係ない…し?


思い出してまた赤面する。どこかに穴をあけて、隠れてしまいたい。そう思って、壁にべたっと倒れこんだ。

「玲子」

「ひゃい!」

政宗に呼ばれて、玲子は変な声で返事をした。

「な、なんでしょうか…?」

恐る恐る政宗のほうをみやる。政宗の不機嫌オーラ全開を加えた鋭い目つきに、玲子は半泣きになる。

「な、なんでしょーかぁー!」

頭を抱えて、びくつきながら体を小さくしていると、政宗はふぅ、とため息をついた。
できるだけ隅のほうへと逃げる玲子に、政宗がすっと近づいてきた。


わ、私が悪いことしたわけでもないのにぃ!


びくびくしている玲子の頭に、政宗はそっと、手を置いた。

「ふぇ…?」

政宗のその暖かい手に、玲子は顔を上げた。さっきまでの般若の様な政宗の顔はなく、とても優しい顔をしていた。

「悪い。仕方ねーことだってのは、わかってんだがな」

はぁ、と政宗はまた、ため息をついた。
政宗の優しくて甘い声、優しい顔。玲子はホッと安堵し、いつの間にか、びくびく震えていたのも止まっていた。
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