戦国遊戯
幸村とさくらを探さなくてはいけないのに!


と、心の中で叫ぶ玲子。

「ほら、藤吉郎さん!ぐぐっといっちゃって!」

「すまぬな、玲子。お主に酌をしてもらって」

ほろ酔いで上機嫌の藤吉郎。
あれからすぐに城を出て、まだ1時間もたっていないくらいだろうか。嫌なことがあったというのもあってか、藤吉郎の酒のペースはとても速く、酔いが回るのも早かった。

「あ、旦那!今日は昨日の分とあわせて払ってくださいよ!」

店の主人に言われて、藤吉郎がすまない、と謝っていた。

「昨日はお連れさんが、少しばかり出してくれてましたから良かったですけど。タダ飯はさせませんからね!」

主人が呆れ顔で藤吉郎に言うと、藤吉郎も笑って、ちゃんと払うよ、と言った。

「昨日も藤吉郎さん、ここに来てたの?」

玲子がお酒を注ぎながら聞くと、藤吉郎は苦笑いを浮かべながら答えた。

「あぁ、昨日は自棄酒でな」

すると、今度は慶次が質問した。

「昨日は誰ときてたんだ?」

聞かれて、藤吉郎は少し悩んだ。

「いや、来たときは一人で…あぁ、店になかなか男前の兄ちゃんがやってきてな。その兄ちゃんと少し飲んだんだ」

そこまで言って、藤吉郎はふっと、真面目な顔つきになる。

「そういえば…昨日城に帰ったときに、その兄ちゃんに似た顔の男が、地下牢に連れて行かれていたような…」

「藤吉郎さん!それ、ほんとに!?」

玲子に聞かれて、うーん、と、藤吉郎は唸る。

「いや、わしも酔ってたしな。多分、なんだが…」
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