戦国遊戯
藤吉郎の言葉に、玲子はすぐに店を出ようとした。が、それを政宗に制止される。

「はやまんな、玲子」

「だって…だってゆっきーが!」

悲痛な表情の玲子に、政宗は首を横にふった。

「今あせってことを起して、助けられなくなったらどうする?急いては事を仕損ずるつーだろ?」

政宗の言葉に、ぐっと玲子はつまる。

「どうした?玲子。その男、知り合いなのか?」

藤吉郎に聞かれ、玲子はなんと言っていいかと、言葉に詰まった。

「ゆっきーは…その…」

「玲子の命の恩人だ」

政宗が玲子に助け舟を出した。

「なぁ、藤吉郎、そいつは何で捕まってんだ?」

慶次が聞くと、藤吉郎も困ったように答えた。

「それがな。昨日見かけた人物が、同一人物かどうかを確かめようと、地下牢へ行こうとしたんだが、入ることができなかったんだ」

藤吉郎の言葉に、玲子は首を傾げた。

「どういうことですか?」

「今、地下牢に入れるのは、信長公と、あの忌々しい予言者だけでな。わしは入れなかったんだ」

ちっと舌打ちをする藤吉郎。玲子、政宗、慶次の3人は顔を見合わせた。

「えぇい!どうにでもなれ!玲子、お主の命の恩人とやら、助けに行くぞ!」

「えぇ!?」

藤吉郎の言葉に、玲子はびっくりする。

「藤吉郎、お前、自分の言っていること」

「わかっている!だが、今の殿は、あの予言者の言いなり…あのような殿に、わしは仕えたいのではない!」

そう言うと、お猪口をだん!と机にたたきつけた。

「おい、主人。勘定!」

藤吉郎は、さっさとお店の勘定を済ませてしまうと、店を出た。

「と、藤吉郎さん!」

慌てて3人が後を追いかける。

「見ておれ、あの小童め。今に殿をたぶらかせたこと、後悔させてやる!」

くくっと笑いながら、藤吉郎は城へと戻っていった。
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