戦国遊戯
「今ここで、一緒に共倒れになっちゃったらまずいじゃない?だから、慶次には上で待っててほしいの」

そう言うと、玲子は携帯を取り出し、カチカチっと操作して、慶次に渡した。

「このカラクリが、一定の時間が経つと震えるから。もし、それまでに私が帰ってこなかったら、何かあったと思って、助けてね?」

玲子の言うことも一理ある。そう思い、慶次はわかった、と言って、くるっと向きを変えた。

「…必ず、無事に帰って来い。何かあったら、絶対に助けてやる」

慶次の言葉に、玲子はありがとう、と頭を下げた。


アラームがなるのは30分後。もしもなんにも無ければ、そのくらいあれば十分戻ることはできるはず。


すぅっと深呼吸をして、玲子はさらに奥へと足を進めた。

階段を下りきると、じっとりとした、湿っぽい、どんよりとした空気の場所に出た。奥のほうから、何人かの呻き声が聞こえてくる。

すっと一歩、前へ足を踏み出す。と、1人の老人が、手枷をつけられて壁に貼り付けられている状態で唸っていた。

「…!」

その老人には、両目を潰された痕が見えた。玲子は必死で吐き気をこらえ、思わずしゃがみこむ。


な、なんなの、ここは一体!


ぎゅっとこぶしを握り締め、さらに奥へと進んでいった。

牢に入れられている人たちは、すでにぼろぼろの状態で、目を背けたくなるような状態だった。

「…玲子?」

名前を呼ぶ声がした。玲子は声のした方を向く。
そこには、さくらをしっかりと抱きしめている幸村の姿があった。

「ゆっきー…?」

「玲子…」

声をかけると、かすれたような声で、また、玲子の名を呼んだ。
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