戦国遊戯
こそっと牢の外の様子をうかがってみる。意外なことに、いまだに見張りの姿はなかった。

「行っても大丈夫かな…」

不安そうな表情の玲子に、幸村はなにか言いたげな、少し微妙な表情をしていた。

「れい…」

幸村が玲子の名前を呼ぼうとした瞬間だった。

「おい、裏にいるらしいぞ!!急げ!!」

複数の足音に、カチャカチャという、何かが擦れたり、ぶつかったりしたような金属音がした。
玲子と幸村は、思わず身をかがめた。


そうだ、正宗が外で陽動してくれてるんだ!!


「ゆっきー、行こう!!」

そう言うと、幸村の手をひっぱり、急いで入り口を出て、門の方へとかけていった。


終了の合図は…


人差し指と中指をまっすぐにして口に加え、思いっきり空気を吐き出す。
ピイっという大きな音が、辺りに鳴り響いた。

「ゆっきー、急いで!!」

幸村の腕を引っ張り、全速力で泊まっていた宿へと向かった。
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