戦国遊戯
***** 幸村's View *****

しどろもどろになる玲子の姿を見て、少しだけ後悔した。


聞かなければ良かったかもしれない。玲子が他の男を好いているかもしれない。
わかっていたことなのに、それでも俺は、他の男と一緒にいる玲子を見たくなくて、気持ちを伝えた。

あの男の口から、玲子が慶次の嫁だと言われた。そんな言葉、信じてなどいなかった。
でも。
まったく信じていなかったかと聞かれれば、正直、心のどこかで、本当にそうなのかもしれないと思ったことも事実だ。

玲子は俺の嫁でも、許嫁でもない。
玲子が誰と付き合い、結婚しようと、それは、玲子の自由だ。


なのになぜ。
俺はこんなに胸が痛いんだ。


「…っきー?ゆっきー?」

玲子に呼ばれていることに気づき、はっとする。

「すまない、どうした?」

慌てて玲子に聞くと、玲子は心配そうな表情を浮かべる。

「…やっぱり横になってた方がいいよ。起きてるの、辛いんでしょ?」

頭の中で、ぐるぐるといろんなことを考えていて、玲子の話を聞いていなかったのを、玲子は、拷問を受けたせいだと思っているようだった。無理やり、幸村を布団の中に押し込めた。

「…玲子」

幸村がためらいがちに玲子の名前を呼んだ。

「どうしたの?ゆっきー、どこか痛む?辛かったら言ってね?」

そっと濡れた手ぬぐいで、幸村の顔を拭きながら、玲子は微笑みかけてきた。そんな玲子の姿をみて、幸村は、いや、と短く呟き、目を閉じた。
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