戦国遊戯
「玲子が他の男のもとへ嫁いでもいいってのか?」


不意に誰かに問いかけられる。


「誰だ!?」


慌てて振り向くと、そこには幸村とそっくりな人物がニヤニヤと笑いながら立っていた。

「あ…お前は一体、何者だ!?」

幸村が叫ぶと、男はにやっと笑って答えた。

「俺は、お前だよ」

言葉の意味がわからず、幸村は眉を顰めた。

「お前は、玲子が他の男の物になってもいいと、本気でそう、思っているのか?」

聞かれて幸村は思わず、うっと言葉につまった。

「れ、玲子が幸せなら…俺はそれで…」

そういいつつも、どこか胸がちくっと痛んだ。

「素直になれよ。本当は嫌なんだろう?どうしてそんな嘘をつく」

言われて幸村はむっとした顔をして反論する。

「嘘ではない!確かに、玲子が俺を選んでくれれば一番嬉しいが、しかし…」

「他の誰かを選んで、お前は本当に、心から祝福できるのか?」

男の言葉に、できる、と答えた。
いや、答えたつもりだった。


声が出なかった。


「正直だな。できないんだろう?」

男が笑った。幸村は反論しようとするが、うまく言葉が出てこなかった。
もがくような幸村の表情をみて、男は真剣な表情に戻り、幸村に尋ねた。

「玲子が好きか?」

「…好きだ」


声が出た。


幸村は、少し驚いたような表情をする。男はふっと微笑んだ。
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