戦国遊戯
「ならばもがけ。奇麗事を並べて、惚れた女を手放そうなどと考えるな」

男の言葉に、幸村ははっとする。

「本当に玲子が好いているなら、諦めるな。たとえ他に好いた男がいようと、自分がそいつと一緒になるよりも、もっともっと幸せにしてやると、そのくらいの気持ちを持て」

幸村はこぶしをぎゅっと握り締めると、黙ってこくんと頷いた。

「ではいけ。玲子がお前を待っている」


男がそう、言い終わった瞬間、幸村はぱちっと目が覚めた。
見覚えの無い天井。


「…ここは…一体…」

少し体を起こそうとすると、体のあちこちが悲鳴をあげた。

「△×○△□!!」

痛みで、声にならない声が出た。ふと気づくと、側でうつ伏せで寝ている玲子の姿があった。

「そうか…ここは…」

城での出来事や、昨日の出来事が、ゆっくりと、鮮明に、幸村の中をかけていった。


…ずっと俺のことを、看病してくれていたのか…


そっと玲子の髪をかきあげる。

「う…ん……」

少しだけ、眉がぴくんと動いた。が、玲子はそのまま、すーっと寝息をたてて眠ったままだった。

「玲子」

小さく名前を呼んだ。

「…ゆっ…き…」

玲子が微笑みを浮かべながら、幸村の名前を呼んだ。
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