戦国遊戯
***** 幸村's View *****

「玲子!」

玲子の呼ぶ声が聞こえた気がした。
幸村はがばっと起き上がった。痛む体をさすりながら、ふっと政宗が視界に入った。


…玲子がいない?


きょろきょろと部屋中をくまなく探してみるが、玲子の姿はなかった。

「なんだ、五月蝿ぇなぁ…」

むくっと政宗が起き上がる。と同時に、政宗もきょろきょろと辺りを見回した。

「…玲子?」

どうやら、政宗も、玲子がどこにいるのかわからないようだ。

「玲子はどこだ?」

政宗に聞かれて、幸村は首を横にふった。

「起きたときには、すでに姿はなかった」


なんだか嫌な予感する。なんだ?この胸騒ぎは。


幸村の表情が一段と険しくなる。そんな様子に、政宗も眉をひそめた。

「あいつ、まさか一人で」

政宗がはっとして呟く。幸村もその言葉にはっとした。

2人が部屋を出ようと、襖をあけたとき、女将がちょうど、前を通りがかった。

「あぁ、お客さんたちもお出掛けかい?」

女将の言葉に、幸村と政宗は顔を見合わせた。

「もって、どういうことだ?」

政宗が聞くと、女将は困ったような顔をして答えた。

「それがね、お連れさん、雨の中を、行くとこがあるとかって、傘もささずにどこかえいっちまったんだよ」

はぁ、と女将はため息をついた。
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