戦国遊戯
「女将!どこへ行くとか、聞いておりませんか!?」

幸村が女将の肩をがしっとつかんだ。女将は少し、頬を赤らめた。

「それが、悪いんだけど何もいわずに出て行ったもんだから」

やれやれ、といった表情の女将。幸村が走り出そうとしたそのとき、政宗が、幸村の腕を掴んでとめた。

「何をする!」

幸村は政宗をにらみつけた。

「あせるな」

政宗の小さく、それでいてドスのきいた一言に、幸村は一瞬ひるんだ。

「しかし」

幸村が反論しようとすると、政宗がそれをさえぎった。

「玲子の居場所は、多分、お前も思っている場所だろう。だが、俺やお前が、のこのこと現れたとして、素直に入れてもらえるわけが無いだろう」

政宗の言葉に、幸村は何も言えなくなった。

「進入するにしても、方法を考えなくては、助けに行った俺たちが、逆に捕まったりしたらどうする」

すでに玲子は捕まったものという前提で話が進んでいるが、それについては、幸村は何の反論も無かった。

「助けるんだろう?玲子を」

政宗の言う通りにするというのは、少しばかり癪だったが、言っていることはもっともだ。幸村はおとなしく、政宗の言葉に頷いた。

「俺たちのことは置いておいて、まずは玲子を助ける。一時休戦だ」

政宗がすっと手を出してきた。幸村は、一瞬、ためらいはしたものの、こくりと頷いて、手を握り返した。
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