戦国遊戯
「とにかく、まずは玲子の居場所を特定する」

いったん二人は部屋に戻って、作戦会議を始めた。

「万が一にも、玲子が城ではなく、別の場所に用事があったとすれば」

政宗がそこまで言ったとき、幸村はふとさくらを連れて行った慶次のことを思い出す。

「そういえば、前田慶次。やつは?」

玲子のことだ、もしかすれば、さくらの様子を見に行ったのかもしれない。そう、思ったのだ。

「…そうか、あいつもいたな」

忌々しそうな顔で、政宗が舌打ちをする。幸村は首を傾げた。

「何も無ければ、もう戻ってきてもいいはずだが…」

ふむ、と政宗は顎を撫でながら考え込む。慶次が戻ってこないのは、さくらを連れて行ってくれているからだと、そう思っていたが、まだ無事が確認できていない。

「玲子は、慶次のところへ行ったんだろうか」

幸村がつぶやくと、政宗は首を横にふった。

「いや、それは無いだろう。第一、玲子だって慶次の居場所は知らないだろう」

政宗の言葉に、幸村は納得した。確かに、慶次がさくらをどこに連れて行ったかなどわかるはずが無い。慶次が出て行ったあと、玲子は幸村と一緒にいたのだから。

「…やはり、玲子は城にいる、と考えるのがよさそうだな」

幸村の言葉に、政宗は頷いた。玲子がこの地を訪れたのはまだ2回目のはず。けが人の幸村や、疲れきって休んでいる政宗を放ってまで会いに行くほどの知人がいるとは思えなかった。

「では、どうやって城に忍び込むか、だが…」

これに関しては、幸村も政宗も、いい案がまったく浮かばなかった。あの、天下の織田信長の城だ。警備は厳重だ。2人がうーん、とうなっていると、部屋に入ってくる人物がいた。

「お!真田の!無事に戻ってこれたのかい!」

『慶次!』

ある意味、待ち望んでいた男の登場に、幸村と政宗の声がきれいにハモッた。
< 288 / 347 >

この作品をシェア

pagetop