戦国遊戯
ぱしゃぱしゃとぬかるんだ道を走る3人。天候が悪いせいもあってか、辺りはすでに真っ暗で、人気も少なかった。

「2人のことを知っている人間は少ないだろう。とにかく、まずは中に入るぞ」

そう言って、慶次は門番のそばへと近づいて行った。

「よう。精が出るねぇ」

にこにこと笑いながら慶次が話しかけると、門番の2人はぺこりと頭を下げた。

「これは慶次様。あぁ、そういえば、奥方様の容態はいかがですか?」

さくらを急いで医者に連れて行くため、玲子が体調を崩したようだ、と言って、門番たちに門を開けさせたのだ。

「あぁ、心配には及ばん。今は家で安静にしておる」

笑う慶次に、門番たちは、ほっとしたような表情を浮かべた。
そのとき、片方の門番が、慶次の後ろにいる2人に気づいた。

「慶次様、そちらは?」

聞かれて、慶次はあぁ、と答える。

「1人は見覚えがあるだろう。玲子の付き人だ。ちと、玲子の物で忘れ物をしてしまったようでな。こっちは新しい俺の部下だ」

不本意そうな表情を浮かべるものの、2人はぐっとこらえた。

「そうでしたか。あぁ、それではどうぞお通りください。あいにくのこの天気です。かなり外は冷えますから」

そう言って、門の入り口を開けてくれた。

「すまんな」

慶次はそういうと、2人を中にはいるよう促した。

「今日はこの天気だ。訪問客もいなかったんじゃねぇのか?」

聞かれて門番は笑った。

「そうですね。あ、でも」

思い出したようにもう片方の門番の顔を見ながら、そういえば、と言葉を続けた。

「客ってわけじゃなかったんですけどね、1人の女子が雨宿りをしてまして」

すると、もう一人がその後を続けた。

「そうそう、藤吉郎さまが、風邪をひくとかで、中につれて入っておりましたな」

首をかしげながらまた、もう一人が続ける。

「お知り合い…みたいでしたが」

それを聞いて、慶次はそうか、と呟いた。門番にがんばれよ、と、ねぎらいの言葉をかけると、自分も城へと入っていった。
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