戦国遊戯
「おや、どうしてここにいらっしゃるんですか?」

学の声に、幸村の顔がみるみる怒りをあらわにする。

「…あいつ…!」

幸村が出て行こうとしたそのときだった。

「あの女と一緒に、牢に閉じ込めておいたはずですがねぇ」

学が言うと、藤吉郎は気のせいじゃないか?と、へらっとした様子で答えた。

「まぁいいですよ。牢の鍵が開いていて、あなたの姿が無くなっていたので、確認に来ただけですから」

言われて、藤吉郎は舌打ちをした。

「そうそう、ここに、あの女の一味がいるんじゃないかと思ってきてみたんですが」

学はそういうと、部屋の中を見回した。

「ふふ、さすがにそう簡単には姿を現しませんか」

そう言うと、くるりと向きを変えた。

「そうだ、あの女を助けたければ、半刻ほど後で、中庭にいらしてください」

学はわざと大きな声を出していった。まるでそばに幸村たちがいることがわかっているかのように。

幸村と政宗は、飛び出して叩きのめしてしまいたい衝動を必死でぐっとこらえた。

「それでは、これで」

にたっと、ねっとりとした笑みを浮かべ、慶次をちらりと見て、学はその場を去っていった。

ほんの少しして、襖が開く。

「悪かったな。誰かが向かってきてる感じだったからよ、思わず」

慶次がすまなそうな顔で、そういうと、2人はいや、と短く言って、藤吉郎の部屋の中へと戻った。
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